放射線耐性に優れた「RAD-PAK®️」とは|メモリ・A/Dコンバータ・マルチプレクサ(MUX)など、豊富なラインナップを展開

火星探査ローバーと衛星

 

地上とは異なる過酷な環境下で、安定した動作が求められる宇宙開発。放射線耐性は、宇宙開発で必須な要素のひとつです。そんな放射線耐性に優れたメモリやA/Dコンバータ等、幅広いラインナップを展開する「RAD-PAK®️」について、世界的メーカーのDDC/PDC社の専門家に詳しくお話を伺いました。

 

DDC/PDC 岡田社長

 

DDC/PDCとは】

DDC/PDC社は、アメリカ・ニューヨークに本社を構える世界的メーカーです。航空機等で機器同士のデータ通信時に活用されるという点で高い信頼性や安全性が求められるデータバス分野を中心に、50年以上も業界を牽引し続けてきました。MIL-STD-1553Bに準拠したデータバス製品においては、日本トップシェアを誇っています。 

DDCロゴPower Device Corporation コーポレートロゴ

☞【MIL-STD-1553B準拠データバス製品では国内トップシェア】DDC/PDC社とは?

 

 


1.放射線耐性に優れた「RAD-PAK®️」とは

―――さっそくですが、「RAD-PAK®」について教えてください。

**岡田さま**

「RAD-PAK®️は、TID(トータルドーズ効果)を低減可能な放射線耐性に優れたDDCのパッケージング技術です。RAD-HARD加工によって放射線の影響を受けにくいため、過酷な放射線環境下に置かれる宇宙空間で安定した動作を可能とします。

DDC PDC RAD--PAK製品

製品例としては、各種メモリをはじめ、高精細なコンバータ、高速スイッチングを可能とするマルチプレクサなど、お客様が必要とする性能に合わせた幅広いラインナップをご用意しています。

【「RAD-PAK®️」製品例 】

製品種別

製品例

 

メモリ
(Memories)

 [DDR2] 97D2H8G64(64GB)
 [Flash] 69F64G16(16GB)
 [SDRAM] 84SD6432 & 84SD12832(4GB)
 [EEPROM] 79LV0832
 [PROM] 27C010T

コンバータ
(Data Converters)

 [Analog-to-Digital] 9042 12-Bit, 41 MSPS A/D Converter
 [Digital-to-Analog] 7846B 16-Bit Digital to Analog Converter


マルチプレクサ
(Multiplexer / MUX)

 [MUX] 338
 [Fault-Protected Analog MUX] 358
 [CMOS Analog MUX] 306

 



2.宇宙で必須の“放射線耐性”

―――「RAD-PAK®️」の主な特長を教えてください。

**岡田さま**

最大の特長は、宇宙用途で必須とされるTID(トータルドーズ効果)を低減できることです。

一般的な地上用途や“ディープスペース(深宇宙)”未満では、放射線による影響度合いが比較的少ないため、民生品での対応も可能とされる場合もあります。しかし、月を含むディープスペース以降ではそうもいきません。 

ディープスペースとDDC製品

地上から3万Km以上も離れたGEO(静止軌道)以降のディープスペースでは、それ未満に比べて放射線に晒される割合が大きくなります。すると、当然ですが宇宙用に設計されていない場合には、TIDやSEによる故障の可能性が大きくなってしまうんです。

その点で「RAD-PAK®️」製品は、放射線耐性として100krad、あるいはそれ以上を誇るなど、“宇宙用”製品としてさまざまなミッションの遂行に耐えうる設計となっています。



3.人工衛星ほか、宇宙で“故障ゼロ”の豊富な実績

―――宇宙用の基準を満たす「RAD-PAK®️」製品で具体的な実績はありますか?

**岡田さま**

「RAD-PAK®️」製品は、宇宙プロジェクトをはじめ、放射線耐性が必要とされる地上用途でも活躍しています。実際に、下記のようなプロジェクトで採用いただいています。

【「RAD-PAK®️」製品採用実績 】

・火星探査ローバー「Perseverance」
・月極域探査ミッション
・国際宇宙探査計画「アルテミス計画」/月周回有人拠点

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)
・X線分光撮像衛星
・火星衛星探査計画

また、人工衛星や宇宙ステーションなど、些細な故障も致命的なミッションにおいて、現在に至るまで“宇宙での故障ゼロ”を継続しています 。

―――過酷な環境下であればこそ、“故障率の少なさ”は非常に重要ですね。

**岡田さま**

DDC/PDCは、MIL規格に準拠した自社工場を所有しています。「RAD-PAK®️」製品もウエハから買い付けをおこない、自社MIL規格認証工場でパッケージングはもちろん、スクリーニングまで実施しているんです。こうした一貫した体制で製造されている製品だからこそ、品質に自信をもって提供しております。


4.自社工場だから叶う “品質・コストの両立”

―――実際の導入にあたっては、品質の高さと共に、コスト面も気になります。その点はどのような特長がありますか?

**岡田さま**

自社工場を所有しているDDC/PDCは、スクリーニングレベルを調整できることから、コスト調整も可能です。検査によって一律のコストがかかってしまうのではなく、“必要とするレベルに応じた検査”を実施する。これによって、品質を担保しながら、コストも抑えた放射線耐性の高い「RAD-PAK®️」製品をご活用いただけるようになっています。

PDC Space Microelectronics

※PDC Space Microelectronics
13000 Gregg Street, Suite C, Poway, CA 92064

通常は放射線耐性の検査を一度するだけでも、非常に大きなコストがかかります。放射線耐性の試験は特別なこともあり、個別に試験をおこなうハードルは低いとはいえません。そのため、一つひとつの部品をゼロからテストすることは大きな手間とコストがかかります。しかし、DDC/PDCでは自社工場だからこそ柔軟に検査対応ができ、部品単位で品質にこだわることも可能です。

 

―――MIL規格に準拠した工場を持つDDC/PDCだからこそ、品質の高さに加えて、コスト面での柔軟性もあることは嬉しいメリットですね。

**岡田さま**

宇宙開発では、地球から距離が離れるほどに、放射線耐性の高さや部品単位での品質が重要となります。DDC/PDCは、宇宙での実績はもちろん、MIL-1553をはじめとした防衛製品でも多くの実績を積み重ねてきました。「RAD-PAK®️」は、こうした実績に裏付けされた、さらなる宇宙開発の発展を支える技術であると自負しています。


まとめ>>

本記事では、宇宙開発の未来を支える重要な技術「RAD-PAK®️」について、その特長や具体的な活用事例について解説をしました。「RAD-PAK®️」についてさらに詳しく知りたい方は、下記の問い合わせフォームよりご連絡ください。

 

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