宇宙マーケット新時代で求められる“実績ある信頼性” |DDC/PDCの宇宙用SBC「SCS3740」 とは

 

 

民間の宇宙旅行もおこなわれるなど、身近になりつつある宇宙。特に、現代では“ディープスペース(深宇宙)”は大きな注目を集めています。本記事では、そんな宇宙/深宇宙で活躍する宇宙用SBC(シングルボードコンピュータ)について、活用シーンや重要視される機能、そして宇宙でも実績豊富なDDC/PDC社の注目製品までご紹介します。

 

DDC/PDC 岡田社長

 

【DDC/PDCとは】

DDC/PDC社は、アメリカ・ニューヨークに本社を構える世界的メーカーです。航空機等で機器同士のデータ通信時に活用されるという点で高い信頼性や安全性が求められるデータバス分野を中心に、50年以上も業界を牽引し続けてきました。MIL-STD-1553Bに準拠したデータバス製品においては、日本トップシェアを誇っています。

DDCロゴPower Device Corporation コーポレートロゴ


1.宇宙でも重要なSBC(シングルボードコンピュータ)

―――SBC(シングルボードコンピュータ)について、宇宙ではどのような役割を果たしているか教えてください。

SBC for space

※SCS3740R1(左) / SCS3740G2(右)

**岡田さま**

SBC(シングルボードコンピュータ)は、人工衛星やロケット、探査用ローバーなどで不可欠な存在です。たとえば、地球とは環境も重力も異なる星に探査用ローバーを着陸させるには、地表との距離や機体の進入角度など、各種センサー情報の並行処理が必要ですよね。この並行処理に、コンピュータの処理能力が必要となるわけです。

探査用ローバー

少し前までは大型のコンピュータを機体に搭載していましたが、現代では小型化が進み、高性能なコンピュータとしてSBCが活躍しています。

特に昨今では、火星・土星など、いわゆる“ディープスペース(深宇宙)”と呼ばれる領域への進出も活性化してきています。そして、宇宙環境では民生品では対応が難しいレベルにも対応可能な“宇宙用SBC”が注目を浴びています。

 

―――火星といえば、宇宙航空研究開発機構(JAXA)計画の火星衛星探査計画(MMX : Martian Moons eXploration)で、DDC/PDC社様のSBCが採用されていますね。宇宙用SBCとして、どのような点が評価されたのでしょうか?

**岡田さま**

MMXで採用されたDDCの宇宙用SBC は、過酷な微小重力下でのサンプリングミッションで求められる高度な操船制御が可能です。その処理能力や、宇宙用SBCで不可欠な放射線耐性、そしてSBC・宇宙用部品における10万台以上の出荷実績と宇宙での故障ゼロという高信頼性をご評価いただき、採用が決定されました。 

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2.宇宙用SBCで不可欠な“放射線耐性”とは

―――なぜ宇宙用SBCに“放射線耐性”は不可欠なのでしょうか?

**岡田さま**

地上と異なり、宇宙では放射線が半導体に重大な影響を及ぼします。ここで述べた“放射線の影響”の例としては、主に「トータルドーズ効果(TID)」および「シングルイベント効果(SEE)」の2つが挙げられます。

TIDとSEEのイメージ

まず、「トータルドーズ効果(TID:Total Ionizing Dose Effects)」は、宇宙上で多量の放射線を浴びた際に、半導体素子が劣化してしまう現象のことです。放射線は、物体をすり抜けるため、SBC内の半導体素子も放射線の影響を受けて劣化してしまうんです。

また、「シングルイベント効果(SEE:Single Event Effects)」は、半導体素子に過電流が生じてしまうことで、通信データが壊れてしまったり、機器が故障してしまったり、最悪の場合はデータ/機器が完全に修復不可能になってしまったりする現象を指します

地球からはるかに遠い宇宙で不具合が起こってしまうと、簡単に復旧作業はできません。そのため、不具合を未然に防ぐためにも、宇宙用SBCは放射線耐性が求められるんです。

 

―――地上から離れても安定動作が求められる宇宙用SBCは、“放射線耐性”が非常に重要だとわかりました。では、具体的に“放射線耐性”はどのように実現しているのでしょうか?

 

**岡田さま**

放射線への対策として、一般に放射線耐久性の高い製品、いわゆる「ラドハード(Rad-Hard)製品」が使用されます。

SCS3740※金色部分がRad-Hard

先ほどお話ししたように、放射線は物体を透過する性質を持っているため、“いかにその放射線の影響を小さくできるか”が重要です。ラドハードは、放射線によるデータエラーの発生や半導体素子自体が壊れてしまうことを防止できるため、宇宙用SBCで非常に重要な存在だといえます。

 


3.いま求められている“ディープスペースでの実用性”

―――“放射線耐性”以外に、現代の宇宙用製品で求められていることはありますか?

**岡田さま**

現在、宇宙ビジネスといえば世界中で政府だけでなく、民間企業も多く参入しています。そのため、開発スピードの短縮や、火星や土星といったディープスペースで動作することがこれまで以上に求められてきています

ディープスペースとDDC製品

※ディープスペースで実績のあるDDC/PDC製品

たとえば米国では、開発スピードを向上させるために、性能の差別化をソフトウェアに見出す動きが主流になりつつあります。これは、イチからコンピュータの設計をしていては、開発全体で時間がかかりすぎてしまうためです。

またディープスペースへの対応として、“宇宙用”の設計が非常に重要視されています。というのも、比較的地球に近い位置では問題がなかった場合でも、火星や水星では宇宙用製品でなければうまく動作しない場合もあるためです。

こうした背景から実際に、ディープスペースでの活用を目的としたDDC/PDCへの“宇宙用”製品に関するお問い合わせは増加傾向にあります。これからの宇宙の新時代に向けては、さまざまな宇宙ミッションに対応可能な汎用性、そして、過酷な宇宙環境で耐えうる信頼性、つまり“宇宙での実用性”が重要な鍵を握っているといえます。


4.DDC/PDCの宇宙用SBC「SCS3740」とは

―――宇宙用SBCで重要な要素についてはわかりました。それでは、実際にDDC/PDC社様で提供されている宇宙用SBCについて教えてください。

SBC for space※SCS3740R1(左) / SCS3740G2(右)

**岡田さま**

DDC/PDCの宇宙用SBCとして、「SCS3740」をご紹介します。SCS3740の主な特長は、汎用性トレーサビリティ高い放射線耐性、そして、確かな打ち上げ実績の4つです。

 

①汎用性【実用的な処理能力・マルチインターフェース】

まず処理能力は、宇宙での実用性を考慮してミドル〜ハイエンドクラス帯の最大1700 DMIPS。複雑・高度な設計は、宇宙で放射線に晒された際に故障につながってしまう危険もあります。そのため、過不足のない技術選定が重要です。 

加えて、マルチインターフェースにも対応。SCS3740は、MIL-1553BやEthernet、SpaceWire、CANなど、複数のインターフェースに対応しています。これにより多様な機体間の通信を可能が可能となり、あらゆるプロジェクトに柔軟に対応が可能です。

 

SCS3740R1

※3U Rad Hard Space VPX SCS3740R1

 

SCS3740は、高性能とマルチインターフェースによる汎用性が特長のひとつです。これにより、自由度高く、標準部品として様々なミッションで流用でき、スピーディな機体開発を可能とします

―――宇宙での実用性を考えての性能、そしてマルチインターフェースによる多様化した機体間の互換性。これらによって汎用性を持つのが、SCS3740ということですね。

 

②トレーサビリティ

**岡田さま**

各種コンポーネントに対するトレーサビリティも、SCS3740における特長のひとつです。

DDC/PDCは、メモリなど多くのコンポーネントを自社工場で手がけています。また、納入時に「搭載されているのはどの部品で、どのような工程でつくられているか」もすべてドキュメント化した徹底管理を実施しております。

PDC Space Microelectronics

※PDC Space Microelectronics
13000 Gregg Street, Suite C, Poway, CA 92064

「部品への理解不足→地上での検証不十分→宇宙での不具合」といった連鎖は避けなければなりません。そのため、実際にDDC/PDCの部品単位での細かなサポートはお客様に好評をいただいており、品質に自信を持ってご提供しています。

―――メモリをはじめとしたコンポーネントメーカーが提供する製品だからこそ、安心して使用できる製品ということですね。

 

③高い放射線耐性

**岡田さま**

おっしゃる通りです。
また、先ほどお話した通り、地上から3万Km以上も離れたGEO(静止軌道)以降のディープスペースでは、それ未満に比べて放射線に晒される割合が大きくなります。すると、当然ですが宇宙用に設計されていない場合には、TIDやSEによる故障の可能性が大きくなってしまうんです。

その点で各コンポーネントは、放射線耐性として100krad、あるいはそれ以上を誇るなど、“宇宙用”製品としてさまざまなミッションの遂行に耐えうる設計となっています。

 

④打ち上げ実績

**岡田さま**

そして、SCS3740は、宇宙への打ち上げ実績があることから「TRL-9」レベルに位置します。最小の「1」から最大の「9」まで存在するTRL(Technology Readiness Level、技術成熟度レベル)は、NASAが用いている技術基準です。

地上でのテスト段階では不具合が起きていなかったとしても、宇宙では不具合が起きてしまう可能性があります。だからこそ、厳しいテストによる認証をクリアした段階の「TRL-8」と、宇宙での動作確認がとれた段階「TRL-9」の間には、大きな差が存在します。

その点で、宇宙での実績を示す「TRL-9」レベルのSCS3740は、宇宙で安心してご活用いただけるSBCといえます。

高機能・マルチインターフェースによる汎用性とコンポーネント単位でのトレーサビリティ、高い放射線耐性、そして宇宙での実績。以上のように、いま必要とされている“実用性”を伴った宇宙用SBCとして自信を持ってご提案できるのがSCS3740です。

 

まとめ>>

本記事では、宇宙用SBCの活躍シーンや、重要視される特徴、そして宇宙でも実績豊富なDDC社における注目製品の宇宙用SBC「SCS3740」をご紹介しました。

 SCS3740について詳細が気になった方や、宇宙用製品に関する相談をご希望の方は、ぜひ下記お問い合わせからお気軽にご連絡ください。

 

 

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