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次期戦闘機ほか、大型航空機で注目の電源管理装置“SSPC”とは? 特長やメリットを専門家が解説

作成者: JFE商事エレクトロニクス|Jul 30, 2024 9:51:14 AM

 

日本で注目を集める次期戦闘機や、それに連動する無人航空機など、大型航空機の発展が目覚ましい昨今。そんな大型航空機の分野における電源管理装置として、「SSPC」が世界的に注目を集めています。本記事では、SSPCの特長やメリットついて、防衛宇宙分野の専門家であるDDC/PDC社に解説いただきました。

 

 

【DDC/PDCとは】

DDC/PDC社は、アメリカ・ニューヨークに本社を構える世界的メーカーです。航空機等で機器同士のデータ通信時に活用されるという点で高い信頼性や安全性が求められるデータバス分野を中心に、50年以上も業界を牽引し続けてきました。MIL-STD-1553Bに準拠したデータバス製品においては、日本トップシェアを誇っています。

☞【MIL-STD-1553B準拠データバス製品では国内トップシェア】DDC/PDC社とは?

 

 


1.将来プロジェクトなどにも活用が期待されるSSPCとは

―――さっそくですが、SSPC(ソリッドステートパワーコントローラー)について教えてください。

**岡田さま**

SSPC(ソリッドステートパワーコントローラー)は、コンピュータのデジタル処理によって電源管理を可能とするサーキットブレーカーです。電源管理という点では、類似の装置に機械式のサーキットブレーカーが存在します。SSPCは、たとえば米国では戦車などに使用されており、最近では大型の無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)での活用も進んでいます。

―――無人航空機といえば、日本では将来プロジェクトにおいて支援機としても導入が検討されていますね。

**岡田さま**

そうですね。無人航空機など、“電源管理が重要視される場面”におけるソリューションとして1つの選択肢になり得るのがSSPCです。

というのも、無人航空機においては、多機能を実現するために装置が無数に存在します。そのどれかひとつでも電源の操作を間違えてしまったり、機器がショートしてしまったりすると、大事故につながってしまいますよね。

機械式サーキットブレーカーの場合、基本的に電源管理は目視/手動でおこなわれますが、管理する機器が多いほどすべての電源状態を常時監視するのは非常に困難になります。また、手動での操作にはどうしてもヒューマンエラーのリスクが伴います。さらに、過電流の発生については目視では気づきません。

これらを解決するのが、電源のデジタル管理を可能にするSSPCなんです。


2.機械式サーキットブレーカーとSSPCの違い

―――機械式サーキットブレーカーよりも詳細な電源管理を可能とするのがSSPCといった印象を受けました。具体的に機械式のサーキットブレーカーとSSPCの違いについて教えてください。

**岡田さま**

まず電源管理に関する機能が挙げられます。いずれも電流のオン/オフが主な用途で、サーキットブレーカーと共通する機能としては、過電流を検知すると自動で電源スイッチをオフにするトリップ遮断特性があります。これに加えてSSPCは、コンピュータ経由で電源スイッチのオン/オフが可能です。

※SSPCの概略図

また、構造面でも大きな違いがあります。機械式サーキットブレーカーは文字通り機械式であるのに対し、SSPCは半導体スイッチによる電子制御となります。これは、たとえば航空機での使用において大きな意味を持ちます。

 

―――航空機での使用において、どのような点が重要になるのでしょうか?

**岡田さま**

たとえば“軽量化”。航空機の設計において、軽量化は極めて重要な課題とされます。なぜなら、スプーン1本分の重さでさえ、燃費や航行距離、ペイロード(積載量)に影響を与えるからです。

 

また、SSPCは機械式に比べて非常に軽量で、配線も大幅に削減できます。具体的な数字を挙げると、同じチャンネル数で比較した場合に、SSPCは機械式サーキットブレーカーから70%もの重量・容量を削減できます。 


3.SSPC活用で得られるメリットは?

―――実際の運用面でのメリットについてもう少し詳しくお聞かせください。

**岡田さま**

SSPCの活用で得られるメリットは大きく2つあります。1つ目は“電源のデジタル処理での管理”、2つ目は“SWaPの最適化”です。

まず“電源のデジタル管理”について。繰り返しとなりますが、SSPCは半導体スイッチによるデジタルな電源管理を可能とします。たとえば各装置の電流をリアルタイムに可視化できるため、異常の即時予知検知が可能となり、故障のリスクを低減できます。

また、電源のON/OFFを自動で、あるいは任意のタイミングでコンピュータ制御できることによって、電力を効率的に制御するだけでなく、緊急時には迅速な対応も可能とします。

冒頭でもお話したように、航空機等は異常が発生して操作ができなくなる時間が数秒でもあれば大事故につながってしまいます。そのため、適切な電源管理によってフェールセーフが担保されている状態は、非常に重要な意味を持ちます。

 

―――可視化による効率的な電源管理、そしてフェールセーフ設計。これらがデジタルでの電源管理による1つ目のメリットなのですね。それでは2つ目のメリット“SWaPの最適化”についても教えてください。

**岡田さま**

「SWaP」は、“Size(サイズ)、Weight(重量)、and Power(電力)”の略称です。これらは特に防衛分野で重要視されています。

SSPCでは、一般的な機械式サーキットブレーカーと比べてサイズ・重量・容量を大幅に、最大で70%程度も低減できます(※同チャンネル数で比較時)。 また電源の効率的な管理もおこなえるため、システム全体の消費電力抑制も可能です。

装置自体のコンパクト化・軽量化は、機体に搭載できるモノを増やせることを。そして、効率化により消費電力を抑えられることは、限られた電力で長く・高パフォーマンスを保ったまま稼働し続けられることにつながります。

 


4.今後SSPCはどのような活躍が想定されるのか

―――ここまで、SSPCの特長やメリットをお聞きしてきました。最後に、具体的にSSPCはどのような活躍が期待されているのかを教えてください。

**岡田さま**

SSPCは、主に各種大型の乗り物での活躍が期待されます。というのも、デジタルでの効率的な電源管理は、偶発的な事故やヒューマンエラーを低減できることから、安全性の向上にもつながるからです。

現代では、技術の発展に伴って“空飛ぶ車”といった高機能なモビリティがどんどん実用化されてきています。たとえば、日本で注目を集めている将来プロジェクトや音速の無人航空機などもそうですよね。

 

このような高機能なモビリティは、当然ながら高機能を実現するために無数の機器やシステムが連動しています。そして、高機能性を損なわずに、墜落といった人命に関わる大事故を起こさないことが課題として挙げられるでしょう。

 効率的な電源管理によって高機能性を担保しつつ、安全性を必要とする場面で、SSPCは非常に重要な役割を果たすといえます。

 ―――たしかに、人命に関わる乗り物であればこそ、安全性は非常に重要ですね。DDC/PDC社様では実際にSSPCの導入実績があるとお聞きしました。

**岡田さま**

はい。DDC/PDCが提供しているSSPCシリーズは大型無人航空機への導入実績があります。

たとえば航空機においては、地上では問題なく動作していたとしても、空中では予想外の不具合が起きる場合があります。たとえば、激しい振動でネジが緩んでしまったり、極端な温度変化によって動作が不安定になってしまったり、といった具合に。

DDC/PDCでは、このような試験も広くカバーしており、SSPCも過酷な環境下で動作が保証されたMIL規格(軍用規格)に準拠しています。そして、多くの実績があります。そのため、SWaPを意識した大型航空機や高機能な機体において、効率的な電源管理によるソリューションをご希望の方には、確かな貢献ができるものと考えております。


まとめ>>

本記事では、「SSPC」の基本的な特長から機械式サーキットブレーカーとの違い、そしてメリットから航空機等での活躍が見込まれている理由などを、SSPCの導入実績も豊富なDDC/PDC社からお話をお聞きしました。

SSPCについて詳細が気になった方や、DDC/PDC社のSSPCシリーズに関する相談をご希望の方は、ぜひ下記お問い合わせからお気軽にご連絡ください。